整数の足し算を思い浮かべてみる. これは整数の集合 という演算を定めたものだから、代数的構造である. どのような特徴をもっているだろうか.

整数同士を足したとき, その結果は必ず整数になる. たとえば, を足したら整数ではなく分数の になるなんてことは, 絶対にありえない. 整数と整数を足せば整数になる. このことを, 演算 は整数において閉じているという.

自由に整数を3つ選んだとして, それらを としよう. ( でも, でも, なんだって構わない.) このとき, となっていることに気づく. たとえば, である. この性質, すなわちどこから計算を始めても結果は同じという性質をもつとき, 結合律を満たすという.

あるいは, どんな整数 を選んでも, それを足した結果が と変わらないような数 がある. このような集合の要素 (元) を単位元といい, 整数の足し算には単位元として が存在する.

実際, である.

また, どんな整数 に対しても, となるような が存在する. 言うまでもなく である. これを の逆元という.

集合のどの要素にも逆元が存在するということは, いま考えている演算が足し算であるならば, 自由に引き算できるということを意味している. たとえば, もしも の逆元, すなわち が存在しなければ, " を引く" ということができない.

整数の足し算にみられるこれらの性質を, もう少し一般的な形で述べたものを群の公理といい, 集合 の上に定めた演算 が群の公理を満たすとき, は群であるという. を省略して "は群である" ということも多い.

群の公理

集合 と, その上に定めた演算 が群をなすとき, 次の公理を満たす.

  1. 任意の について, (結合律)
  2. ある が存在して, 任意の に対して, (単位元の存在)
  3. 任意の に対して, ある が存在して, となる. は単位元とする. (逆元の存在)

整数の上に, によって同値関係を入れて個の同値類に類別する. この同値類の上に整数 と同じように加法を入れると, 群をなす.

証明 で割って余る数は, ある整数があって, と表すことができる. だから, で割って余る数と余る数の和は, ある整数があって, である. となるから, で割って余る数が, この加法の単位元である.

となる場合に, となるので, 任意に選んだに対して, を選ぶことによって,逆元を得ることができる.

さらに, 整数の上の演算と同じ演算を使っているので, 当然ながら, 任意の について, で割って余る数を として, が成立 (推移律) する.

以上のことから, 整数の上に, によって同値関係を入れて個の同値類に類別する. この同値類の上に整数 と同じように加法を入れると, 群をなす. ■

なお, この群は整数の加法の性質から, 明らかに可換, すなわち となる. このような群を, 可換群あるいはアーベル群という.

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