フェルマーの小定理

群の位数

の集合の要素数を、群の位数といって、 で表します。

部分群

の部分集合が群をなしているとき、の部分群といいます。すなわち、群の部分群は下記の性質を満たします。

  1. 任意の に対して,
  2. ならば

ここでの逆元を表すものとします。

2よりであるから, 1のとしてを選ぶことにより, (ただし, の単位元とする) が得られるから, 上の2つの性質は単位元がに存在することを含意する.

また, の演算が結合的なのだから, 当然ながら同じ演算を使う についても演算は結合的になる.

よって, 1, 2を満たせば, 演算が に閉じていて, かつ自体が群をなすといえる.

剰余類

の部分群について, として, の要素に対して積 を次のごとく定める:

この後に証明するように, このように を定めるとで部分群 は群 の, というかたちの類別を引き起こす. この同値類を による左剰余類という.

左合同

の元 に対して, 積 が部分群 に属しているとき, すなわち のとき, を法として左合同であるという.

補題 左合同は同値関係である.

証明 を法として左合同であることをとあらわす.

は部分群であるから, 任意のに対して逆元が存在して, (部分群ゆえに演算がにおいて閉じているから,)

すなわち,

である.

について, であるとき, は(部分)群なのだからその逆元 を含む. すなわち,

よって,

推移律についても,

について, であるならば, は部分群であって乗法がにおいて閉じているのだから,

すなわち,

である.

以上より, 左合同は反射律, 対称律, 推移律を満たし, 同値関係である ■

補題 を法として左合同であることと, は同値である

証明 を法として左合同であることを とあらわす.

ならば, なのだから, ある が存在して,

逆に, ならば, ある があって,

すなわち, .

以上より, は同値である ■

上記の補題から, 群は部分群を使って (部分群を法として左合同という関係を使って,) 類別することができて, その同値類は などと表すことができる.

全単射

の任意の元は, 部分群を左剰余類に写す写像 と見ることができる.

すべての元に対して,

と定義すると, 明らかに

なのだから,

であり, 単射である.

また, すべての について, ある があって,

となる (となるようにを取ればいい.)

したがって, は全単射である.

ラグランジュの定理

定理の任意の部分群について, を法として類別した同値類の個数をとして,

である.

証明 上の補題から, 部分群を法とする左合同によって群を類別したとき, そのいずれの同値類も (どの も, ) の位数と等しい位数をもつ (元をかけることは全単射 を適用することと同一視できるから,)

よって, の位数はの位数とを法とする左合同で類別したときの同値類の個数の積であり,

このことから, 次のことが系としてしたがう.

の任意の部分群について, (の位数はの位数の約数である.)

巡回群

有限位数の群 (有限群という) の単位元でない元 について, その冪乗を集めた集合の部分群をなす.

というのも, 群の位数がなのだから, このような集合を個並べた部分集合

の中には少なくとも2つ同じ元が含まれる (鳩ノ巣原理.)

それを とおくと, 単位元をとして,

このことから, には必ず単位元 が含まれる.

とおく. 任意の に対して, として, あるがあって,

であるから, 演算が閉じており, また, 任意のについて,

だから, 逆元が存在する.

明らかに$G$の部分集合であって, 演算が閉じていて逆元が存在するので, は部分群である. これをによって生成される巡回群といい, で表す. となるの場合は,

が部分群をなし, このとき, 元 の位数はであるという.

フェルマーの小定理

定理 を素数として, の倍数でない任意の整数について,

である.

証明 のときは, 明らかに である. 以下, とする.

は体であるから, を除いて乗法に関して群をなす. この群を とする.

1でない任意の に対して, 巡回群は群の部分群であるから, ラグランジュの定理より, の約数である. すなわち, ある整数 があって,

よって,

は  から を除いた群であったから,

以上より, 群 においては

であり, である ■

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