体
環のうち, 通常通りに加法と乗法を定めた整数 のように乗法が可換である, すなわち掛け算の順序を のように入れ替えてもよい環を, 可換環という.
体は可換環であり, かつ乗法について を除くすべての元に逆元が存在する代数的構造である. 平たく言うなら, で割ること以外なら自由に足し算, 引き算, 掛け算, 割り算のできる構造のことである.
例
- 有理数 , 実数 , 複素数 の上に通常通りに加法, 乗法を定義した構造は体をなす.
- 剰余環 は乗法について可換なので可換環である. は が素数 のとき, すなわち のとき, を除くすべての元の乗法に関する逆元が存在し, 体をなす. このことは, ベズーの補題から容易に証明できる.
証明 すべての であるような は素数 と 以外に公約数を持たず,
である.
ベズーの補題より, うまく整数 を選ぶことにより,
にできる. すなわち,
となる. このことは, を除くすべての の元に対して, 乗法に関する逆元 が存在することを意味している.
よって, は体をなす. ■
これまでに紹介した代数的構造は、下図の通りにまとめられます。