約数と整数の割り算

約数

整数に対して、ある整数があってとなるとき、の約数である、またはを割り切るといいます。で表します。

ここで、「あるがあって、」という表現は、「 を満たすような をうまく選ぶことができる」くらいの意味です。かたっくるしい言い回しですが、慣れてしまえばどうってことはありません。例を見てみましょう。

,

に対して、としてを選ぶことでにできますね。「の約数である」の言い換えは「で割り切ることができる」です。実際にで割り切ることができて、商はになると言っても同じことです。についても同様です。

最大公約数

整数の各々の約数のうち, 共通のものを公約数といいます。 公約数のうちで最大のものを最大公約数 (greatest common divisor) といって、 で表します。

約数というのは割り切ることのできる数のことでしたから、の約数、つまりを割り切ることのできる整数を並べると、

ですね。おなじようにして、の約数を並べてみると、

となりますから、これらから共通する部分を取り出してみると、

ですね。これが公約数です。

この中で一番大きな数は ですので、の最大公約数はです。これを と表します。

互いに素

ふたつの整数が、以外の公約数をもたないとき、"は互いに素である"といいます。このことは、最大公約数がである、と言い換えても良いです。

つまり、

と「は互いに素である」は同じことを言っています。

は互いに素である。

の約数は

で、の約数は

ですね。共通する約数、つまり公約数は

だけです。なので、は互いに素です。公約数がだけなので、最大の公約数はでしかありえないこと、つまり であることも確認できるかと思います。

倍数

に対して、となる整数のことをの倍数といいます。ちょっとややこしいですか?「の倍数とは, で割り切れる数のことである」ということです。たとえば、に対して、となるので、の倍数です。

整数の集合をで表しますが、の倍数の集合は と表します。

たとえば、

です。

整数の除法の一意性

約数について説明する際に、「整数に対して、ある整数があって、 となる」ことを「の約数である、またはを割り切る」という...とまわりくどい言い回しをしましたが、これの別の言い回しとして、「で割ってみて、あまりがでない (=「を割り切る」の言い換え) ときには、と書ける (表せる)」と言い換えることができます。

割り切れない場合、つまり余りがでない場合はどうでしょうか。

たとえば、で割ると、商はとなり、余りはとなります。「余りが」ということは「割り切るには余分だった」ということですので、余りのを割られる数のから引けばで割り切れるはずです。つまり、

と表せます。一般に、で割ったとき、商と余りがあって、同様に考えると余りを引けば割り切れる、つまり

と表すことができます。

ところで、で割る場合、商が以外になることはありえず、あまりが以外になることもありえませんが、これは一般に言えることでしょうか。つまり、任意に (好き勝手に) 選んだ整数  に対して、商と余りは一通りだけ存在すると言えるでしょうか。これを肯定するのが次の定理です。

定理 任意の整数 に対して, ある整数 が存在して,

となる. このような は、任意に選んだ に対してただ一つだけ存在する.

証明 まずは、うまくを選べば、と表せることを証明します。続いて、そのような表現が一通りしか存在しないことを示します。

のとき, としてを選べば, と表すことができる.

のとき, がいかに大きかったとしても, 十分大きな自然数をとることで, とすることができます1 2

を満たすの最小の値をとしましょう。そうすると、ではまだ以下であり、より大きくなるので、

です。すなわち 以上 未満の値であって のいずれか3ですから、

と表すことができます。

次に一意性4を示します。

任意5 に対して, 2通りの表し方, が可能と仮定する.

の辺々引く (左辺から左辺、右辺から右辺を引く) と、

となりますが、ここでもしも だと仮定すると、 となりますが、よく式を眺めてみると、の倍数でなければならないことに気づくかと思います。

は, であるから,

となります6。 bの倍数

の中で

を満たす数は だけなので、 すなわち となります。しかしながら、このとき の右辺が となり かつ 左辺が とならないためと仮定すると矛盾がでてくることがわかりました。

ですので、 です。

さらに、 ならば

となりますので、結局 となってしまい、異なる2通りの表現 (割り算の仕方) が存在するという仮定が誤っていたことがわかります。つまり、表現はただ一つしか存在しません ■

1. 例をひとつ挙げます。 ですが、 という自然数をとることによって、 とできます。
2. アルキメデスの原理といいますが、どんなに大きな数と小さな数を選んできても、十分に大きなと掛け合わせることで、 となる、というある意味で当たり前なことを主張しているだけです。ある意味当然といっても、数の中に無限に大きなものの存在を認める場合 (つまり無限大もまた数であると考える場合)、この主張は正しくありません。例えば、超実数では正しくありません。
3. 未満の最大の整数 (より1つ小さな整数) はですね。
4. ただひとつしか存在しないこと
5. 「任意の...に対して、...」というのは、「どんな...を選んでも、...になる」という意味です。例えば、「任意の自然数に対して」というのは、「どんな自然数を選んできてもいいです。それをとしましょう。このとき、となります」という意味です。
6. わかりにくければ、数直線上にをとって, をその区間にプロットしてると良いと思います。このとき はプロットした2点間の距離を表していますから、 となり、すなわち であることを確認できるかと思います。

上でも述べましたが、この定理は、「どんな2つの整数を選んでも一方で他方を割ることができる」ことと、「割り算の仕方が一通りしかない (商と余りが一通りに定まる)」ことを主張していると言えます。

整数 に対して, 整数 が存在して,

となります。 で割ったとき、商がこれ以外になることはありえませんし、余りが以外になることも考えられません。

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